2017年2月11日土曜日

Today's Report [Travel] 子連れに[も]優しい、英国の美しい宿 vol.6 「オールド・スワン&ミンスター・ミル」再訪

Today's Report [Travel] 子連れに[も]優しい、英国の美しい宿 vol.6 「オールド・スワン&ミンスター・ミル」再訪
「オールド・スワン&ミンスター・ミル」。こちらは旧館にあたる「オールド・スワン」。(C)Marino Matsushima
英国の旅行業界でキーワード化してきている「Family Friendly」(子連れに優しい)を体現する宿の一つとして、4年前の「英国の美しい宿vol.1」でご紹介した「オールド・スワン&ミンスター・ミル(Old Swan And Minster Mill)」。昨年夏に再び宿泊する機会があり、以前の取材時から幾分か変化が見られたのでレポートしたい。
オーク材の梁が印象的な離れ「ガーデン・スイート」。(C)Marino Matsushima
シェリー酒。(C)Marino Matsushima
前回は旧館「オールド・スワン」の客室に案内されたが、今回宿泊したのは中庭の離れ、「ガーデン・スイート」(The Garden Suite 1泊1室275ポンド~)。横長の小さな平屋建てで、中に入るとまずオーク材の重厚な梁が目を奪う。中庭に面した側はふんだんに窓を入れており、こぢんまりとした中庭の眺めに癒される。(反対側は窓がなく、壁に多数の版画がかけられている。おそらく駐車場に面しているためだろう) バスルームは入り口近くと奥の2か所にあり、ベッドの隣には大きなソファも。細長いとは言え、スペース感は十分だ。コーヒー紅茶各種はもちろん、ナイトキャップとしてシェリー酒も用意されている。(枕元に近郊のアウトレット、ビスター・ヴィレッジの割引クーポンが置かれていたのは前回同様だが、今回は子連れ滞在である旨、伝えてはいても、前回のような子供向けのプレゼントは置かれていなかった。)新館の「ミンスター・ミル」には家族向け用のファミリー・ルームも用意されているが、左右や上下階の客室ゲストに気兼ねなく泊まれるという点で、このスイートは特に乳児や活発な子供連れには嬉しい部屋と言えるだろう。
敷地内を貫くWindrush川で、「釣り」というより稚魚たちへの「餌やり」を楽しむ。(C)Marino Matsushima
チェックイン後、スタッフに案内され、子どもと敷地内を貫く小川に繰り出す。「本来は早朝か夕方でないと魚は集まらないんだけれど」と言いながら、彼が茹でた鶏肉のかけらをひっかけた竿を貸してもらい、子供が釣りの真似事をしてみると、3,4センチほどの川魚の稚魚たちがつつきにくる。いくつかのスポットで試した後、敷地内の大木から垂れ下がるブランコで遊んだり、水力発電装置を見学したり。(このホテルではすべての電力を、この小川の水力でまかなっているという)。
バーの一角に用意されたセルフ式のクリーム・ティー(アフタヌーン・ティーよりもカジュアルなお茶)。(C)Marino Matsushima
川べりに何気なく置かれたクロケー(ゲートボール的なゲーム)のセットや人間サイズのチェスを「もうちょっと大きくなったら一緒に遊べるね」と横目にしながら通り過ぎ、「オールド・スワン」に戻ってクリーム・ティー。おおぶりで素朴に焼き上げられたスコーンとジャム、クリーム紅茶がバーに用意され、好きな席でいただいていいのだという。重厚なタペストリーが掲げられた奥の間のソファに深く沈み込むように腰掛け、子供と静謐なお茶の時間。ストロベリー・ジャムがみずみずしく、スコーンのほろほろとした食感に合う。
レストランの夕食より、骨付きラム。(C)Marino Matsushima
夕食はバー奥のレストランにて。(取材時点では)地元のレアなロングホーン・ビーフのステーキが名物(27ポンド)ということだったが、子供はチキン(17.5ポンド)、筆者は骨付きラム(18.5ポンド)をチョイス。日本人的には若干多めだが、数種類の野菜も含めた上品な盛り付けだった。
イングリッシュ・ブレックファーストを一通り盛った図。(C)Marino Matsushima
翌朝、再び川べりの散策を楽しんでからビュッフェ形式の朝食へ。温かなおかずもセルフ・サービスになっており、少食であったり偏食のある子供連れには好ましい。種類の多いフレッシュ・フルーツにチーズやサラミまで、英国ならではの色彩豊かでボリューミーな朝食を心行くまで楽しめた。
15世紀の貴族の館跡ミンスター・ロヴェル・ホール。各部屋や当時の暮らしについての解説プレートもあり、興味深い。(C)Marino Matsushima
食後、荷造りを終えて宿近く(徒歩3分ほど)の中世の館跡ミンスター・ロヴェル・ホール(Minster Lovell Hall)を見学に行き、なお時間が余ったので菜園横のアスレチック・コーナーへ。宿泊客の子供向けに設置された木製の遊具が並んでおり、4年前にも子供が大喜びしていたエリアだ。だがもう一つ、前回、雨天時も子供が遊べる場所として関心させられたインドア施設「遊び場」をのぞいてみると、おもちゃは片隅に追いやられて他の部屋の椅子が積まれ、物置として使われているようだった。実はこの取材の少し前にホテルが別のオーナーに買い取られ、取材の翌月、新たな体制がスタート。刷新されたホテル・ウェブサイトには以前あったような「お子様向け」アクティビティ・メニュー頁は見当たらず、いっぽうでは取材時、建設中だったスパが昨秋オープンした。新たなオーナーは「大人の」客層を重視しているのかもしれない。
川べりに置かれたクロケーの用具。川を挟んで奥の小屋が水力発電所となっている。(C)Marino Matsushima
とはいえウェブサイトには「どなたさまも楽しんでいただける様々なものが私どもにはございます」とあるし、ファミリー・ルームも引き続き存在しているので、子連れも心地よく泊まれる宿であることに変わりはなさそうだ。最寄駅のCharlbury駅からはタクシーで15分程度、と至便性もよく、車(レンタカー)がなくともロンドンから気軽に向かうことのできる「田園の宿」である。