2014年10月25日土曜日

Today's Report FILM 「キーワードは“希望”。東京国際映画祭コンペティション部門審査員記者会見レポート」(2014.10.24)




左から品川ヒロシ、デビー・マクウィリアムズ、エリック・クー、ジェームズ・ガン、ロバート・ルケティック、イ・ジェハン (C)Marino Matsushima
昨日から始まった第27回東京国際映画祭だが、今回のコンペ部門審査員は若手が目立つ。若い感性を持った彼らはいったいどんな視点で映画を「審査」しようとしているのだろう。二日目となる2411時からの審査員記者会見に出かけてみた。

スクリーン前に並んだ椅子に腰かけたのは、審査委員長のジェームズ・ガン(『スクービー・ドゥー』脚本、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』監督)と、ロバート・ルケティック(『キューティー・ブロンド』監督)、イ・ジェハン(『私の頭の中の消しゴム』監督)、エリック・クー(『私のマジック』監督)、デビー・マクウィリアムズ(『007シリーズ』キャスティング・ディレクター)、そして品川ヒロシ(芸人、『漫才ギャング』監督)の6人。カジュアルな空気の中、それぞれに挨拶をしたのち、質疑応答が行われた。

ジェームズ・ガン審査委員長「おはようございます。まだ1日半しか東京に滞在していませんが、ここでの時間を満喫しています。これまでも他の映画祭で審査員グループと仕事をしたことがありますが、今回のメンバーはとても仲間意識が強く、フィーリングもぴったり。一緒に審査するのがとても楽しみです」

イ・ジェハン「今回、映画祭審査員に選ばれて大好きな日本にまた来れたことが非常にうれしいです。ここで映画の仕事をしたこともあり、東京は自分にとって大事な都市。今回のメンバーは和気あいあいのムードで、これから彼らと審査ができることが非常に楽しみです」

ロバート・ルケティック「プレスの方々にようこそと申し上げます。なぜなら、プレスの方々が外に真のメッセージを伝えて下さることで、この映画祭が本当に国際的なフェスティバルになるからです。来日は二回目だが日本は大好きな国です。この映画祭はその大好きな日本を象徴するものだと思います。これからの審査が楽しみです」

エリック・クー「日本は私にとって特別な国です。1997年の私の2本目の作品以降、私の作品を上映してくださっているからです。また、私はずっと日本の漫画に魅了されており、『TATSUMIマンガに革命を起こした男』も公開予定なのでそれも楽しみ。招いてくださって感謝しております」

デビー・マクウィリアムズ「今回が来日2回目となります。ハンサムな監督たちに囲まれてとてもエキサイトしています(笑)。紅一点なので、自分の声を大きくし、意見をしっかり言わせてもらおうと思っています。世界各国から映画が届いている映画祭は、旅をする場でもあります。私たち審査員の責任は重大だと認識しながらみんなでいい仕事をしたいと思っています」

品川ヒロシ「品川です。みなさんお忙しい中有難うございます。東京国際映画祭は以前からすごい国際映画祭と思っていたけど、実際に昨日から参加してみて、パーティーからレッドカーペットから本当にテンションがあがっています。最初に審査員のお話をいただいたとき、普段芸人をやっているので「また文化人ぶりやがって」と仲間に言われるなあ、どうしようかと思いましたが、すごい皆さんとご一緒できることがわかり、揶揄されてもいいやと思って引き受けました。これからこのメンバーで話し合っていくのが楽しみです」

〈質疑応答〉

(バングラデシュ・プレスより)――プログラミングディレクターの矢田部氏は、「瀬戸際に立つ人たち、経済的、政治的な問題でどこにもいけないような状態にいる人たちがどのような人生をたどっていくかを考えるうえで、映画祭の意味がある」ということをおっしゃっていましたが、今回審査員の皆さんはどんな視点でどう審査してゆくのですか?

ロバート「今、人間が置かれている立場は世界どこでも危機的だと思う。政治、経済、個人的問題であろうとみんなある意味崖っぷちだ。その中で、映画はメッセージとして大きな希望をもたらしてくれると思う。今の世の中で、何らかの形で心を打つ、希望を持たせるというテーマはとても大事ではないかと思っています」

エリック「たぶん他のメンバーもそうだろうが、シンプルなフォームでありながら心に直接的に語ってくる、感性に訴えてくるような作品を自分は探している。これは主観的なことだが、今回のメンバーはみんなフィーリングが似ていると思う。エモーショナルな作品を求めています」

品川「僕はこの中で一番キャリアが浅いのでお客さんに感覚が近いし、映画はお客さんのものだと思うので、なるべくお客さんの気持ちで観て面白いと思ったものに意見を言って、音がとか光がというのはそのあとの話。なるべくちらしとか資料を見ないで映画を観て、皆さんと話し合って決めていきたいなと思っています」

イ・ジェハン「僕はあまり考えないようにしている()。監督は自分の世界に閉じこもる仕事だけど、今回は他の人々が作った世界をフィーリングを持って観たい。今の会見の後に最初の作品を観ることになっていて、それが楽しみ。もう一つ言うと、自分的には監督業とは違う個人の立場で、今まで見たことないような作品に心を打たれたいと思っています」

デビー「通常、私たちは“これは自分の好みだろう”と思われる映画を観に行くわけだが、今回に関しては何を観るか全然知りません。ある意味チャレンジだと思う。既成概念を変えてくれる、あるいは自分が経験したことないような経験をさせてくれる映画かもしれない。このコンペ部門では皆さんご存知の通り1000本以上の応募から15本が選ばれているわけだが、今回は何の広告もなしに自分のイノセントな気持ちで見せられる。それが自分の心を揺さぶるかもしれない、何か新しいことを教えてくれるかもしれない。人間は居心地のいいところにいたいものだが、もしかしたら今回の15本によって全然違う場所を見ることができるかもしれない。そういう意味で楽しみにしています」

ジェームズ「とてもシンプルです。自分が観た中で一番好きなもの。自分が知らなかった世界に飛び込み、新しい発見ができる。自分をより理解できる。一緒に行った人をより理解できるようになるというのが映画の良さだと思う。すべてを忘れて違う世界に連れてってくれる映画が好き。みんな違う答えをもっているけど最終的には同じところに落ち着くのではないかと思っています」

(フリーランスジャーナリスト)――ジェームスさん、今回なぜ審査委員長を引き受けたのですか?日本の文化に興味があったのでしょうか? 

ジェームズ「確かに僕は日本の文化、映画に興味を持っています。これまで来日経験がなかったところに話が来て“なんというチャンスだ、招待されて9日間も過ごすことができる”と思ったよ。今朝ショックだったのが、昨日歩いたレッドカーペットに、ウルトラマンが来ていたことを知ったこと。4~5歳のころ大好きだったんだ。(品川が「僕、ウルトラマンと一緒に写真撮ったことありますよ」と差し挟んで「お前なんか嫌いだ!(笑)」と言い返す一幕。)映画的には、黒澤が一番大きな影響を受けた日本人監督だ。小津ももちろんそう。三池もだ」

(C)Marino Matsushima
(ジャーナリスト)――他の皆さんが影響を受けた映画、監督は?

ロバート「もちろん黒澤。また僕が10代のころ、故郷のオーストラリア80年代は映画ルネッサンスでピーター・ウィアー、ジリアン・アームストロングらが活躍していた。イタリアのフェリーニ、ヤングアダルトの頃はスコセージらにもインスピレーションを得ました」

イ・ジェハン「それらに追加すると(笑)、大島渚。デヴィッド・リーン。セルジオ・レオーニ、昨夜彼の話をしたよね(とメンバーたちに)。トニー&リドリー・スコット。アラン・パーカー、エイドリアン・ラインなんかはライティングやスモークを教えてくれた。アントニオーニ、ミケランジェロ。クリストフ・キシェロフスキー、アイゼンスタイン。アニメの押井守…」

ジェームズ「1時間では終わりませんよ、一晩以上かかります」

ロバート「昨日も皆で好きな監督トップ10はと話していて、トップ20,トップ100になったもの(笑)」

エリック「簡潔に言います(笑)。アキ・カウリスマキ。日本では塚本晋也」

デビー「常に私を驚かせるのはポランスキー。毎回違う映画を見せてくれます。スウェーデンやデンマーク映画も、一夜にして映画の撮り方を変えたと思う。低予算であれだけのものを作った。4歳の時に初めて観た「わんわん物語」も忘れられません(笑)」

品川「一番影響を受けたのは深作欣二さん。何百回と観ています。あと、僕は18歳の時に監督か芸人になりたいと思ったんですが、その頃北野武さんが芸人で成功して映画を撮ったので、じゃあ芸人になろうと決めました。監督から芸人になった人はいなかったので(笑)。すごく影響を受けています」

そして審査委員長としてジェームズが「締め」のスピーチ。

ジェームズ「今、さきほど言及しなかった監督の名前で頭がいっぱいになっています()。こういう性格の人間は審査員に向いてないかもしれませんね。それはさておき、僕らが今回求めているのは“希望”です。作品がどう自分を揺さぶるか、期待しています。プレスの皆さんにも大きな使命があると思います。皆さんがあってこそ映画祭のメッセージが広められていくからです。映画はお金がかかるものなので、最終的には興行成績が成功の尺度になるけれど、世界各地の映画祭という“ポケット”でメッセージを送ることもまた大切。そこにはプレスの皆さんの力が不可欠です。応援よろしくお願いします」

*****
ハイテンションで声の大きいジェームズと物静かに語るイ・ジェハンの「真逆」なまでのキャラクターが観ていて面白かったが、メンバー全員に共通していたのが、映画への真の「情熱」。彼らは繰り返し「希望」という言葉を口にしていたが、確かにこの混沌とした世界において、娯楽の形を借りてメッセージを送ることのできる映画は、ますますその内容を問われていると言える。このメンバーでどういう論議がなされてゆくのか。最終日の彼らの審査結果も楽しみになってきた。

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